ムドラーとバンダとは?

ムドラーとバンダはハタ・ヨガ独特の行法です。その大部分は、呼吸を停止するとともに身体の一定部位の、神経、筋肉〉を引き締める動作から成り立っており、これによって体内の圧力を非常に高いレベルへと変化させます。
調気法の過程で行なうムドラーはバング(引き締め)と呼ばれ、身体のある部分に圧力をかけたり、特定の方向に圧力を導くのに役立ちます。ムドラーやバンダは、内臓の緊張、内分泌腺を含むさまざまな腺の分泌、重要な神経叢に直接影響を与えます。伝統的なテキストには、とくに肛門を引き締めるムーラ・バンダや内臓を引き上げるウディヤーナ・バンダの練習によって、大小便の排泄が減少すると述べられています。これは修行者の能力によってさまざまな大気圧以下の圧力を胸腔および腹腔内に生じさせるからです。この点については、コルチゾンや脳内酵素である炭酸脱水、素酵素も水の代謝において類似した変化をもたらします。これらのバンダや倒立のポーズ、肩立ちのポーズなど、身体が逆さになるムドラーの臨床経験によると、これらもまた下腹部に同じような圧力変化をもたらし、
コルチゾンとのあいだに作用の類似性のあることが示されています。このように、尿の排泄低下とはべつに、これらの行法はコルチゾン療法を必要とするような病状の治療にも効果的だということがわかってきました。
「これらの行法とコルチゾン療法の禁忌も類似しているようです。とくに長期の好酸球性白血病(好酸
球の数、一立方ミリメートル中七十パーセント)という症例の場合、薬物治療なしで約六カ月間、倒立のポーズの練習だけを行なった結果、好酸球の数は一立方ミリメートル中約十二~十七パーセントまで減少しました。理論上は、これらの行法によって生じる腹腔内の大気圧以下の圧力が、結果として副腎の皮質層を刺激し、コルチゾンをより多く産生したとも考えられます。しかしながら、この問題についてはそうと断言する前に、適切な実験調査などを通じてさらに正確な臨床上の証拠を集める必要があります。
以上のことから、ムドラーとバンダは無害で簡単なもののように思われるかもしれませんが、それらが現代医学の特定の療法に等しいということからすれば、むしろきわめて慎重に用いなければならないものです。ムドラーとバンダの生理学的効果はときに非常に激烈なことがあるので、わずかに度を越して行なっただけでも修行者を大きな危険にさらしかねません。前述したように、ムドラーとバーンダの実践は子供の場合、ぜったいに勧められません。始めるのは青年期後期以後、男子の場合は十五、六才から、女子の場合は十二、三才からにしてください。とはいえ、青年期に達する年齢は、人種、気候、個人によって差があることも考慮に入れておかなければなりません。