ヨガの腸の洗浄について

腸の浄化法とその効果とは?

この行法は腸を洗浄して分泌や排泄機能を刺激することに関わっており、次の主要な三つの浄化法があります。
ヴァータサーラ腸を空気で洗浄、刺激する。
ヴァーリサーラ、またはシャンカ・プラクシャーラナ腸を水で洗浄、刺激する。
アグニサーラ体内に圧力をかけることによって酵素分泌(「消化の水」)を刺激する。
マヴァータサーラこの行法では、口を空気でいっぱいにして、それをできるだけ大量に飲み込みます。
普通は二十回から三十回飲み込めばじゅうぶんです。その後そのままにしておけば、空気は腸を通っていくらか組織に吸収されますが、後日排泄されるでしょう。しかし空気による洗浄を試みたい人はここでヨガの「ナウリ・クリヤー」を行ないます。ナウリ・クリヤーとは、腹直筋と腹斜筋を意志的に動かす行法です。ナウリ・クリヤーによって、腹部あるいは腹部の筋肉の動きに応じて位置を変える消化管に大気圧以下の圧力が生じ、これによって端動運動が促進されるようになります。そうすると空気はあまり吸収されずに消化管内を急速に通過します。このように空気を消化管全体にさらすことは、現代医学でも消化管の健康にとって非常に有効だと考えられています。腹部の結核の場合、外科的にはただ開腹してしばらく空気に当て、また閉じるということがしばしば行なわれており、非常に有効だと認められています。

ヴァーリサーラ

これは消化管全体を水で洗浄する行法で、「シャンカ・プラクシャーラナ」(ホラ貝の洗浄)とも呼ばれます。ホラ貝は、インドで伝統的に毎日行なわれる礼拝の儀式で神像を洗うに際して用いられます。ホラ貝の中の水の流れる管は曲がりくねって出口も狭く、たびたびつまってしまうため、すっかりきれいに清掃する必要があります。消化管も非常に曲がりくねっており、肛門はとても狭く、たびたび腸がつまってしまうので、つまったものを洗って取り除く必要があります。こうしたことから古代の人はこの行法に「ホラ貝のような消化管の洗浄」という適切な名前をつけたのです。
一般的には、まず約三十グラムの塩と約三十~五十五グラムのレモン汁を加えた約一・五~二リットルのぬるま湯を飲みます。こうすると水の浸透圧が高まり、腸で吸収されることもないので通過がはやくなります。普通、水が肛門から出てくるのに三十分から二時間かかりますが、ヨガの修行者はいくつかの行法によってもっとはやく出てくるようにします。一般に、ヴィパリータ・カラニー(四、五分)、クジャクのポーズをできるだけ長く保ち(三、四回)、パーダ・ハスタ・アーサナ(立位から伸膝前屈する)を行ないます(三、四回)。次にナウリ・クリヤーを行なうのですが、そうすると五分から十分で水が腸を流れ、トイレに行きたくなります。クジャクのポーズができない人はかわりにバッタのポーズをしましょう。体力のあまりない人は、ヴィパリータ・カラニーのかわりに身体を傾斜させるポーズ、その後に膝をかかえこむポーズ、ガス抜きのポーズ(仰向けに寝て膝をかかえこむ)をしましょう。
*体内の水の通過を促進する伝統的な方法では、コブラのポーズや三角のポーズを手を上げて行ない、半マツイェーンドラのポーズで胴体をねじることを勧めています。排泄のためにしゃがむときも腰をねじることが勧められます。これによってより完全な排泄が望めます。
レモン汁は小腸に緩下作用をおよぼすだけでなく食欲も増進させますが、練習をつめば、塩やレモン汁を入れないただのぬるま湯でもできるようになります。
ぬるま湯を飲むときは空気も一緒に飲み込むようにしましょう。飲み込まれた空気は水に混こって水を乳化し、排泄をはやめるだけでなく、腸からの吸収を妨げます。こうして排進が終わったら、九進した動運動を抑えるためヴァマナ・ドーティをして、胃に残っている塩水を取り除きますが、伝統的に行なわれている完全な洗浄法は何時間もかかるので、指導者の下で行なうようにしてください。

マアグニサーラー

アグニサーラという名前は「消化の火をかき立て」明るく燃え立たせることを意味します。すなわち消化酵素(「パーチャカ・ピック」または「消化の火」ともいう)の分泌をうながし、摂取された食物をよく消化させる行法で、その手順は次のとおりです。
少し前かがみに立ち、両手を両膝におきます。完全に息を吐ききり、そのままの状態で腹部、
とくにへその上下の部分をへこませたり突き出したりします。息を吐ききった状態で腹部を各自の能力に応じて何回か動かしますが、普通は四回から六回ぐらいでよいでしょう。息が苦しくなったら普通の呼吸をして少し休んだ後、この過程を数回繰り返します。伝統的な文献によると、アグニサーラ・クリヤーを完全なものにするには、腹部の前後の動きを百回繰り返すことを勧めています(非常に多い回数だと思いますが)。
アグニサーラは、低酸症の傾向がある消化不良に対して非常に効果的な行法です。しかし、胃酸過多症の傾向がある場合や、胃腸に潰瘍形成がある場合には、この行法は禁忌です。またこの行法は矯動運動もうながすので便秘にも有効です。

結腸の浄化法
ヨガの結腸健康法は次のとおりです。

ヴァータ・バスティ 空気で結腸を洗浄する
ヴァーリ・バスティ 水で結腸を洗浄する
ガネーシャ・クリヤ 指で肛門・直腸をマッサージする

マヴァータ・バスティ

この行法には伝統的に、ヴァーリ・バスティと同様に木製の完腸管が用いられてきましたが、現代では、市販されている太めの鼓腸管(腸内ガスを抜くための管)を用いて同等かそれ以上の効果をあげることが可能です。骨盤隔膜を引き上げるとともに肛門を引き締めたりゆるめたりするアシュヴィニー・ムドラーを長期間じゅうぶん練習していれば、しゃがんだときに肛門括約筋をゆるめて「中央のナウリ」を行なうことができるので、そのような道具がなくてもこの行法を行なうことができます。
ナウリは、どのバスティ浄化法を行なう場合にも必要です。ヴァータ・バスティでは、まずしゃみこんで両ひざを胸につけ、両腕で両足をしっかり抱えます。次に両ひざを胸に押しつけるようにして中央のナウリを行ない、肛門括約筋をゆるめて空気を結腸に入れます。ナウリがゆるむと肛門括約筋は自動的に閉じます。結腸が張ってくるような感じがするまでこの過程を何度も繰り返してください。
肛門括約筋をコントロールできない人は、鼓腸管の先を約十五センチメートルから二十五センチメ
ルほど直腸に入れて、中央のナウリを行ないます。ナウリを維持しているあいだは空気が勢いよく入ってきます。管のもう一方の端は片手で保持し、ナウリをゆるめるときは、結腸に入った空気が抜けないように管を折り曲げておきましょう。この過程を五回から十回繰り返して管を取り出しますが、中に入った空気はそのまま保っておきます。ヴァータ・バスティは粘液性結腸炎に有効です。

ヴァーリ・バスティ

手順は前記のヴァーク・バスティに似ています。肛門括約筋をコントロールできる人は水を張ったたらいにしゃがみ、水を肛門から結腸へ吸い上げます。その他の人はバスティ管を使って行ないますが、その場合ナウリをゆるめるたびに、肛門から外に出ている管の端を指で押さえて水が流れ出ないようにしなければなりません。水がじゅうぶんに入るまでこの過程を五回から十回繰り返します。鼓腸管を用いる人は両膝のあいだに水の入ったマグカップをはさみ、鼓腸管の端をカップに入れて水を吸い上げ、もう一方のはしから肛門に入れます。この方法のよい点は、サイフォンの原理も手伝って水がすみやかに流れていくことです。ナウリをゆるめるときは、マグカップの縁で管を押さえて水の逆流を防ぎます。ナウリを五回から十回繰り返せば水はじゅうぶんに入るでしょう。
水が体内に入ったら、次はナウリ・クリヤーに移ります。腹筋を左から右に二十回から四十回、そして右から左へ同じ回数だけ、一、二分のうちにすばやく動かしましょう。そうすると結腸内の水はS状結腸から盲腸のほうへ、またその逆へと流れて大腸全体を洗浄します。
排泄した後は、両ひざを折り曲げてから伸ばしていくクジャクのポーズをとるのが伝統的なやり方です。そうすると腹部の圧迫によって動運動が起こり、結腸からの完全な排泄がうながされて、二後日にトイレに行くときには大腸に残っていた水が完全に排泄されます。ニーカの結腸洗浄法は現代の完場去よりもすぐれているといえるでしょう。
完腸では引力や完腸器を押しつぶすときの高い圧力で水が中に入っていきます。これによって直腸や結腸の壁がふくらみ、おもに未梢部分はきれいになりますが、それも水がしばらくのあいだとどまって少し深く入っていく場合にかぎられます。また、高圧洗腸で洗浄する場合は、身体の右側を下にして横になり、水がゆっくりと入っていくようにして引力で水を盲腸のほうに流していくのが普通です。我慢できるかぎり水を入れたままにしておき、それから排泄するわけですが、このとおりにやっても結腸を完全に洗浄できるとはかぎりません。また、売腸を習慣づけると結腸は調子をくずして、いっそう具合が悪くなってしまう可能性もあります。これに対してバスティでは、水は自然に吸い込まれ、それが結腸自体の動きで流動することによって結腸の調子をよくしていくのです。

ガネーシャ・クリヤー

ムーラ・ショーダナともいいます。この行法では、肛門と直腸部分を洗浄して指でマッサージします。指サックを使うのがもっともよいでしょう。伝統的な方法では、ウコンの根でマッサージすることを勧めています。
手順は、まず指サックを中指にはめてヒマシ油に浸し、それから指を肛門に入れ、できるだけ深く差し込んでいきます。少なくとも約二センチメートル入ったら、指を回転させて肛門括約筋をマッサージしてください。
年配の人には肛門括約筋の病的な乾燥がよく見られ、便がつまったり括約筋の付近の襲の原因にもなっていますが、この行法はそれを予防し、調子を調えてくれます。同時に、肛門括約筋は骨盤内の大部分の内臓を支配する骨盤内臓神経に通じているため、骨盤内の内臓も刺激して調子を調えてくれます。