ウジャーイー調気法の最初の過程であるプーラカは、完全に息を吐ききったあとに行ないます。ウジャーイー調気法では、胸を使って両方の鼻孔から息を及い込みますが、このとき胸を広げると空気は自動的に勢いよく入ってきます。またそのとき、声門を部分的に閉じるようにしましょう。そうするとすすり泣くような音がたえまなく出ます。しかし、すすり立きの場合は音がとぎれたり不意に出たりするのに対して、ウジャーイー調気法では音はとぎれません。このとき、顔や鼻の筋肉を緊張させないようにし、息を吸い込もうとするときにも顔をゆがめないように気をつけてください。
とくに腹部の筋肉の動きに注意を払いながらこれを行ない、息を吸っているあいだはずっと、腹部をわずかに緊張しつづけるように正しくコントロールしましょう。欧米の体育の指導者の中には、息を吸うときは腹部をふくらませるように、と生徒に指示する人がいますが、これは深呼吸の生理学をまちがってとらえているものと思われます。彼らは、腹部をふくらませると新鮮な空気をたくさん吸えて、その結果酸素もたくさん取り入れられると思っているようです。しかし、私たちの研究所で集めた証拠によると、これはまちがいです。実際は、腹部をコントロールしたときのほうが、腹部をふくらませたときよりも一度により多くの酸素を吸うことができます。こういうことから、神経を訓練するという点にかぎっていえば、コントロールされた腹部の筋肉は、リラックスしているときの突き出た腹部の筋肉よりも明らかに有利だといえます。ここで深呼吸という言葉を用いましたグリッ
小川る効果は深呼吸のそれとは非常に異なっています。ですから、調気法と深呼吸の二つクー年をおたがいに同じものであるかのように用いるのはまちがいです。
吸息過程はなめらかで一定の調子でなければならず、このとき、声門を部分的に閉じることによって出る摩擦音も、低いけれども、心地よく一定の調子を保ったものでなければなりません。鼻、とくに嗅覚部分での摩擦は、慎重に避けなければなりません。ときどきまちがった調気法のために脳の障害が起きることがあるのは、この摩擦が原因なのです。吸息の限界にきたとき、焦ってもっと息を吸い込もうとしたり、あと一ccの空気を吸い込もうと筋肉をよじったりしてはいけません。
適切な注意を払わないでクンバカと三つのバンダを同時に行なうのは非常に危険です。熟練した教師の指導を受けることなくこの行法を行なってはなりません。プーラカとレーチャカを一対二の長さで練習しはじめることを強くお勧めします。身体面に重点を置いている修行者の場合、プーラカとレーチャカの実践だけで、調気法から得たいと思っている恩恵すべてを引き出すことができますし、精神面に重点を置いている修行者も、クンバカをせずともかなりの進歩をとげることが可能です。クンバカをあわてて取り入れる必要はまったくありません。もしクンバカを実践しはじめるときには、非常にゆっくりと、かつ注意深く進めていかなければなりません。クンバカは、調気法の中でも細心の注意を必要とするものです。このことは、私たちが長期にわたって行なってきたヨガ・セラピーの幅広い治療的・予防的実践の研究結果ばかりでなく、これまでに研究所で行なわれてきた数多くの実験の結果からもそういえるのです。私たちのもとには多くの修行者がいますが、これまで彼らを見ていると、クンバカをまったく行なわなくても、プーラカとレーチャカの実践だけで、もっとも重要な「チャクラ」のいくつかが活性化しはじめることがわかっています。
もちろん、より高く進歩するにはクンバカは必須のものです。注意を払いつつ修行を進める場合には、クンバカも調気法自体も危険なものではありません。
調気法の時間の長さは心の中で判断します。身体面の修行者も精神的修行者も、最大の集中力をもって調気法を実践するようにしてください。心は呼吸の動きをしっかり追っていなければいけません。しかし、調気法の実践中に「マートラー」(時間の単位)を数えているとき、呼吸への集中がかき乱されることがよくあります。また精神的修行者は、修行が進んでくると、身体の内部や外部のある点に意識を集中することが必要となりますが、やはりマートラーを数えているときに少し気が散ることがあります。集中力に影響を受けることなくなんとかマートラーを数えられる人は、いったんマートラーを数えると決めたら、ちゃんとそのように実行しましょう。
ウジャーイー調気法のレーチャカは左の鼻孔で行ないます。どの段階においても肺のコントロールを忘れてはいけません。胸をリラックスさせるときはゆっくりと最後まで均等に行ないましょう。このとき、声門は部分的に閉じたままにしておきますが、これによって発せられる摩擦音は低く一定の調子を保ったものでなければなりません。
またレーチャカでは、最初から腹部の筋肉をだんだん収縮させていき、胸部が最大限に収縮しても、最後の一ccの息を吐き出すまで腹部を収縮させつづけます。といっても、これは身体に緊張を強いてもよいということではまったくありません。そうではなく、過度の緊張をかけることなく、できるだけ徹底的に息を吐かなければならないということです。
レーチャカの場合、プーラカやクンバカに比べて過度な緊張がかかる可能性は少ないことに気づく人もいることでしょう。しかし、注意すべき相違点は他にもあります。それは、普通に健康な人の場合、プーラカとクンバカの長さが適切な比率を超えてしまうと、心臓よりも肺を損ないやすく、一方、過度に深いレーチャカは肺よりも心臓に影響をおよぼしやすくなるということです。レーチャカはつねにプーラカよりも長い時間をかけますが、そのオーソドックスな時間の比率は二対一だということを念頭に置いて、この標準値に近づけるようにしてください。またこのとき、吸息をあわてて行なわないよう、レーチャカをあまり長く延ばさないようにすることも大事です。さらに、プーラカ、クンバカ、レーチャカの時間の比率は、調気法を一回行なうときだけでなく、続けて行なうときも快適にできるように決めます。たとえば、一度にウジャーイー調気法を十四回続けて行なう場合は、それが終わるまでの各回のあいだにあわてて普通の呼吸をしたくなるようではいけません。一度に調気法を何回行なうにしても、どの過程においても過度に息が切れるような感じがしてはいけないのです。このように、一回の調気法における時間配分を決めるときだけでなく、一度に続けて行なう回数を決めるときにも、適切な注意を払うようにしましょう。