アヌローマ・ヴィローマ調気法とは?

調気法のその他の特性として、左右の鼻孔(鼻の穴)を通して呼吸することを重視することがあいに
*多くの人は、たいていの場合に左右の鼻孔が同じようには働いていないことに気づいていることでしょう。たとえば片方の鼻孔が多少うっ血しているときには、もう片方の子のエ
しているときには、もう片方の鼻孔の通りはスムーズなものです。ヨガでは、これは偶然起こることではなく生理的な目的でそうなるとものだと考えます。
現代生理学では、血管拡張や収縮を交互にすることによって身体はみずから環境の温度の変化などに対して適応していることがわかっており、これは指先、つま先など、身体の末端部分でいっそうはつきりと認められます。エイブラムソンらは、手足や指の体積の変化を測定するプレチモグラフィ(体積変動記録法)を用いて、通常の環境温度に置かれている普通の人では、血管の拡張・収縮が十五秒から六十秒ごとに周期的に間断なく行なわれていることを確認しました。この変化は手足の体積に反映しており、指ではよりはっきり見られますが、手足でも胴体に近い部分ではあまり反映されません。鼻もそのような末端部分といえるかもしれませんが、しかし鼻では両方の鼻孔が同時に影響を受けることはありません。ヨガではこのことについて次のように説明しています。
ヨガでは、呼吸によって左の鼻孔は身体の熱を放散するのに対して、右の鼻孔は熱を保持する、と考えられています。そして、普通、健康な身体は、片方の鼻孔が開くすなわち粘膜の毛細血管が収縮することと、反対にもう片方の鼻孔がつまるすなわち粘膜の毛細血管が拡張することによって調整をしていますが、ヨガによれば、心身の健康を維持するには両方の鼻孔が適切に作用し等しく開いていなければなりません。これが理想の状態ですが、たいていの人は左右どちらかにかたよりがあるので、その場合、ヨガでは「交互にする呼吸」である「アヌローマ・ヴィローマ」調気法が処方されます。
アヌローマ・ウィローマ調気法では、片方の鼻孔を閉じ、一方の鼻孔から前記のような通常の調気法の方法で息を吸い(普通は左の鼻孔から吸いはじめます)、しばらく止息したあと、やはり前記の方法で反対側の鼻孔から息を吐きます。次に、いま息を吐いた鼻孔から息を吸って反対側の鼻孔から息を吐き出し、それを一日二十一回から百二十回繰り返すのです。このような調気法はおもに身体の平状態をもたらすと考えられています。アヌローマ・ヴィローマはまた、「マラ」(不純物)を浄化した。取り除いたりするので、「マラ・ショーダカ」ともいいます(「マラ」とは、ヨガの文献では、身体また。は心のアンバランスを引き起こすすべての原因をあらわす用語です。「マラ」には、身体に影響をおよぼし健康を損なう原因である「シャリーラ・マラ」と、心を乱す原因である「チッタ・マラ」があります)。
多くのヨガ行者はこのようなたんに交互に繰り返す呼吸だけでは満足しません。調気法を始めるときには、どちらの鼻孔もつまっておらず、等しく働くようになっていなくてはならないと彼らは主張します。そのとき初めて、ヨガの最高の結果が得られるというのです。両方の鼻孔の通りをよくするために、彼らは「ヨガ・ダンダ」(北インドでは「クバディ」という)と呼ばれる道具を用います。これは長さ約七十五センチメートルのT字型の棒で、松葉杖のようにわきの下にあてて、その上にいくぶん身体をあずけるようにして座ります。こうして、つまっている鼻孔の反対側のわきの下を圧迫すると、つまっているほうの鼻孔が二、三秒で開くのです。この問題は私たちの研究所でも取り上げられていますが、まだ確定的なことはいえません。
しかし、ふだん片方の鼻孔はつまっていることや、その反対側のわきの下を圧迫することによってつまっている鼻孔が開くことは、研究所で何回も確認されました。現代の生理学では、鼻孔のつまりが左右交互に変わるというのはいくぶん新しい事実です。さらに、少なくとも現時点では、この現象に関する解剖生理学的な説明はなされていません。しかし、この現象は交感神経の神経支配と関係があると私たちは確信しています。客観的な証拠により、この「交互に行なう呼吸」は身体の系統の「バランス」を回復するのにある程度の効果があると思われます。以上、調気法の一般的な実践方法について述べてきました。調気法にはさまざまな種類があり、またそれぞれにいくつかの異なった手順があります。それらの具体的な結果についてもいくつかの主張がなされています。その中でもっとも有益でリスクの少ない調気法であるウジャーイー調気法を次に取り上げます。