ヨガの洗浄法と食事についての考え方

ヨガの浄化法の注意点

浄化法はれらの行法は早朝に行なうのがもっともよく、とくに胃や腸、結腸の洗浄は朝食前に行なうようにしてください。洗浄の後は三十分以内に普通の朝食をとり、胃腸を長いあいだ空っぽにしておかないようにしましょう。
伝統的にいわれていることですが、ヴァマナ・ドーティは食後三時間から四時間のあいだに行なうべきで、食べ物が胃に残っていたら吐き出すようにします。行法を行なった後は三十分以内に軽い食事をとりましょう。
消化管全体をこのように細心に洗浄することに疑問を抱く人もときにはいるようです。たとえばある西洋の批評家はこの先争法を、「宗教のしきたりや社会慣習に浸透した、排泄機能に対するヒンドゥー教の強迫観念」と呼んでいます。しかしこれは不適切な批評といわなければなりません。ヒンドゥー教のしきたりや社会慣習では、このような洗浄法はけっして用いられません。ヒンドゥー教における排出機能に対する唯一の強迫観念といえば、定期的な新食や食事制限についてでしょうが、
それはユダヤ教でもキリスト教でもたいていの宗教は唱えていることです。
消化等は本来、消化や吸収をするためだけにあるのではなく、肺や皮膚、腎臓とともに排泄の主要な通路でもあって、あらゆる種類の毒素はつねに血液や組織から胃腸に送られて排泄されます。これらの物質は固形ではなく粘液状で悪臭がありますが、断食や消化管の洗浄を行なうことでこれらの排間がうながされ、血液による老廃物の腸への運搬も促進されます。生体は自然にこういうことを行なっており、そのような場合、排泄物には余分な量の粘液が見られるものです。ヨガはこの事実を強調しており、これまで述べてきた浄化法は粘液が多い傾向の人や肥満傾向の人に勧められているもので、その他の人は行なわなくてよいとはっきり述べています。「肥満体質と粘液体質の人は調気法を修習する前に、六つの作法を正しく行なうべし。その他の人はこれらの作法を行なう必要はない。なぜかといえば、三つの体質が平均しているからである」(『ハタ・ヨガ・プラディーピカー-H-3)。

ヨガの食事

ヨガ、とりわけハタ・ヨガを学ぶ人のために定められる食事は、非常に厳しいものです。刺激物や酸っぱいものだけでなく塩分(普通の食卓塩)もできるだけ避けるようにいわれます。肉類やアルコール飲料も厳しく禁止され、一般には、乳汁、野菜、多めの穀類、適量の豆類をとることが勧められています。
欧米人は食物を菜食と非菜食(すべての「動物性食品」を含む)に分類しますが、インドでは食物は肉頃と非肉類というふうに分類されます。それは、肉には生命エネルギーが少ないという考えからです。つまり土や水などに潜在する生命エネルギーはまず植物に集まり、動物の体内にはただ「間接的に入っていくにすぎません。肉食動物はおもに草食(「菜食の」)動物の肉を食べて生きています。一方、人間は菜食の段階ばかりでなく肉食の段階も経験してきていますが、大昔から菜食の生活をより多く取り入れてきました。肉食に慣れた人々は野菜だけでは生きていけないのではないかと思うかもしれません。しかし菜食で暮らしている人は世界中にたくさんいます。菜食はけっして肉食に劣らないのです。医者の中にも、ときどきそうした事実を忘れて、患者が完全な菜食主義者になることに反対する人がいるのは残念です。
卵は肉ではありませんが、たんぱく質を多く含むのでヨガでは勧められません。概して、ヨガを規則的に実践する人には「低たんぱくの食事」が求められます。というのは、ヨガを始めて最初の段階では交感神経が高まる傾向があるからです。おもに副交感神経を刺激する調気法やその他のヨガ行法では、それとのバランスをとるために交感神経の働きが活発になるのです。交感神経と副交感神経のバランスが回復するのは一定期間の練習のあとで、しばらく時間がかかるでしょう。このことは、先人がヨガ行法によって身体に現れる結果を経験的に観察し、悪影響を抑える指導をしてきたという事実からも推測されます。ヨガを始めてしばらくは排泄物の量が減少し、ナトリウム塩や、
い野(経される傾向があり、外部からの数に対して神経系が敏感に反応しがちです。
そうえ方を示したにすぎないので、各人が必要とする栄養については、疾患や機能障害によって個々に考慮する必要があります。また、ヨガで食事処方の原則を決める際には、道徳や社会宗教的な点よりも精神生理学な点に重点を置くようにしてください。
ヨガにおける食事の原則について述べてきましたが、そればかりを独断的に主張するのも分別のないことだと思います。というのは、適する食事はその土地で手に入る食糧、気候、年齢、個人の習慣、体質によって大きく異なるからです。たとえばエスキモーが「菜食」で生きていくのは、栄養的な問題を引き起こしてしまうので難しいでしょう。ポール・デュークス卿は、シカゴに出演したエスキモーが急速に「栄養失調で元気がなくなっていく」ようすを興味深く書いています。ある日、獣脂ろうそくの箱をひとつ発見したことで、彼らの栄養問題は解決しました。このように、食事を処方するときだけでなく療法の手順を処方するときにも、個人差をじゅうぶんに考慮に入れなければなりません。